多くの棋士が対局のときに持っている扇子。
スーツで扇子を持っている姿を見ると、若干違和感を感じる方も多いのではないでしょうか。
加えて、実際に扇子を使ってあおいでいるシーンはほとんど見られません。
では一体なぜ棋士は扇子を持つのか。
今回はそんな棋士と扇子の関係について、歴史をたどって解説していきます。
扇子の歴史
まずは扇子の歴史についてご紹介します。
扇子は翳(さしば)→檜扇(ひおうぎ)→扇子と、進化することで誕生したとされています。
扇子の始まりとされる「翳」は、古墳時代に中国から輸入され、宮中で貴人の顔にかざす目的で使われていました。
当時は紙が非常に時代であったため、翳は木や竹でできており、折り畳むことができず、持ち運びには不便でした。
この翳を元に、奈良時代の終わりから平安時代初期にかけて「檜扇」が誕生します。
檜扇は当時、儀式次第などの覚書を持ち運ぶ必要があった役人たちが考えたものと考えられています。
つまり折り畳み式になったのは、メモ帳の持ち運びを楽にするためということになります。
鎌倉時代には、片側に紙が貼られるようになったものが中国やヨーロッパに伝わり、両面に紙を貼った「扇子」が中国で誕生して日本に輸入されました。
その紙の上に様々な絵などの装飾がなされたものが、現代の扇子となっています。
戦国時代と扇子
扇子は戦国時代とも深い関係があります。
おもてなしの文化が始まり、茶道の大ブームだった江戸時代。
茶室に入る際は刀を置き、代わりに扇子を持って入るのが基本とされていました。
挨拶の際に敵意がないことを表現するため、刀を自分の前に置く風習があった当時、茶室では刀の代わりを扇子を自分の前に置くのが礼儀作法でした。
礼儀作法を重んじる武士や侍にとって、扇子は刀と同じくらい大切な道具であったそうです。
将棋と扇子
前述の通り、礼儀作法の道具として使われていた扇子。
戦国時代から遊ばれていた将棋に扇子が用いられるのは、江戸時代からの伝統といえることがわかりました。
確かに対局前の挨拶を見てみると、扇子を自分の前に置いて挨拶をしている場面が見られます。
その他にも、考える際の知恵熱をあおいで抑えるため、扇子開いて閉じての動作で思考のリズムを作るためといった理由もあるそうです。
まとめ
棋士が対局の際、扇子を持つ理由には、江戸時代から続く伝統があることがわかりました。
なにより、扇子も将棋も長い歴史を持ち、それが今なお続いているのがとても誇らしく感じられます。
ぜひ皆さんもこれを機に、扇子を手に取ってみてはいかがでしょうか。
参考:大西常商店 扇子について
(https://www.ohnishitune.com/about-sensu/)
参考:四季の美 扇子の歴史や様々な役割に注目〜知っておきたい扇子の文化と京扇子の特徴
(https://shikinobi.com/sensu)
参考:Wikipedia 檜扇
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AA%9C%E6%89%87)