「映画3月のライオン(後編)」で学ぶ詰将棋
2017年に公開された映画、「3月のライオン」。
主人公の高校生プロ棋士を通じて、将棋の世界に生きる人間たちの様々な葛藤を描いた素晴らしい映画です。
この記事では、本映画後編クライマックスシーンの詰み局面について、棋譜の再生と合わせて解説していきます。
映画「3月のライオン」について
3月18日、前編の公開から1年。劇場で、Blu-rayや配信で、沢山の方に観てもらうことが出来ました。本当に有難うございます!少しずつ冬が去り春が訪れ、順位戦はいよいよ大詰め!な3月を、将棋、漫画、アニメ、映画とともにまた是非楽しんでいただけましたら!!#3月のライオン pic.twitter.com/0avlBUd4fF
— 映画『3月のライオン』 (@3lionmovie) March 18, 2018
映画「3月のライオン」は漫画を原作として、アニメ化、実写映画化された大人気作品です。
幼い頃に家族を失った孤独な高校生プロ棋士の主人公桐山零が、隣町の川本姉妹や棋士仲間、恩師と出会うことで、人として成長していく物語です。将棋の世界に生きる、さまざまな人生を背負った棋士たちの壮絶な闘いも見どころとなっています。
クライマックスで登場する詰み局面
この盤面は映画後編の詰み局面を再現したものです。
作中ではこの3四飛打が詰みの手として紹介されますが、将棋に慣れていない方は、この手で詰んでいるというのがわかりにくいかと思います。
ですので、この手についての全て詰みパターンを解説していきます。
1.後手1五玉と逃げた場合①
1手目.後手1五玉
2手目.先手1六歩(王手)
3手目.後手2五玉
4手目.先手3六銀打(王手)
5手目.後手2六玉
6手目.先手1五銀打(詰み)
6手目で詰みとなるパターンです。
4手目の先手3六銀打(王手)は、後手七段にある金・銀の利かないマスに打たれています。
2.後手1五玉と逃げた場合②
1手目.後手1五玉
2手目.先手1六歩(王手)
3手目.後手2六玉
4手目.先手1五銀打(王手)
5手目.後手2五玉
6手目.先手3六銀打(詰み)
6手目で詰みとなるパターンです。
①のパターンとよく似ていますが、玉のマスが一段上がっています。
1九の香車が睨みが利いているため、玉は1七へと逃げられないのがポイントです。
3.後手2五玉と逃げた場合①
1手目.後手2五玉
2手目.先手3六銀打(王手)
3手目.後手1五玉
4手目.先手1六歩(王手)
5手目.後手2六玉
6手目.先手1五銀打(詰み)
6手目で詰みとなるパターンです。
後手1五玉と逃げた場合①と同じ形に持ち込みます。
4.後手2五玉と逃げた場合②
1手目.後手2五玉
2手目.先手3六銀打(王手)
3手目.後手2六玉
4手目.先手2七銀(王手)
5手目.後手1五玉
6手目.先手1六歩(王手)
7手目.後手2五玉
8手目.先手3六金打(詰み)
8手目で詰みとなるパターンです。
後手玉が先手陣へ逃げて入ってくるのを、4手目の先手2七銀で阻止しています。
5.後手2五玉と逃げた場合③
1手目.後手2五玉
2手目.先手3六銀打(王手)
3手目.後手2六玉
4手目.先手2七銀(王手)
5手目.後手2五玉
6手目.先手1六銀(王手)
7手目.後手2六玉
8手目.先手2七金打(詰み)
8手目で詰みとなるパターンです。
②とよく似ていますが、後手玉の位置が一段下です。
②③共に、金打ではなく銀打でも可です。
6.後手2五玉と逃げた場合④
1手目.後手2五玉
2手目.先手3六銀打(王手)
3手目.後手2六玉
4手目.先手2七銀(王手)
5手目.後手同玉
6手目.先手1八銀打(王手)
7手目.後手2八玉
8手目.先手2九金打(詰み)
8手目で詰みとなるパターンです。
4手目の先手2七銀に対して、後手同玉と先手陣に逃げ込んできました。
3筋は先手4九金が利いているので、2筋で追い込むことを考えます。
7.後手2五玉と逃げた場合⑤
1手目.後手2五玉
2手目.先手3六銀打(王手)
3手目.後手2六玉
4手目.先手2七銀(王手)
5手目.後手同玉
6手目.先手1八銀打(王手)
7手目.後手2六玉
8手目.先手2七香打(王手)
9手目.後手1五玉
10手目.先手2五金打(詰み)
10手目で詰みとなるパターンです。
④同様、4手目の先手2七銀に対して、後手同玉と先手陣に逃げ込んできました。
6手目の銀打と10手目の金打は、金銀逆でも大丈夫です。
その場合は、
6手目.先手1八銀打(王手)
7手目.後手2六玉
8手目.先手2七香打(王手)
9手目.後手1五玉
10手目.先手2六銀打(詰み)
となります。
まとめ.後手は最善手を指し続けても、10手目で後手玉詰み!
どのパターンで後手玉が逃げようとしても、先手が王手をかけ続け、後手玉を詰むことがわかりました。
後手に一度でも手番が回れば、後手6九銀成で先手玉詰みとなりますので、非常に拮抗した試合だということがわかります。
本映画は将棋がわからない方でも楽しめるよう、将棋の用語や盤面のやりとりはほとんど登場しませんが、細かいところに注目し観ても、非常によく作り込まれている作品ということがわかりました。
まだ映画は観ていないけど、解説を通じて興味を持ったという方は、大変面白い作品ですので、ぜひご鑑賞ください!!