「映画3月のライオン(前編)」で指された妙手

2017年に公開された映画、3月のライオン
主人公の高校生プロ棋士を通じて、将棋の世界に生きる人間たちの様々な葛藤を描いた素晴らしい映画です。

この記事では、本映画前編クライマックスのシーンで指される7九角打の妙手について、棋譜の再生と合わせて解説していきます。

映画「3月のライオン」について

映画「3月のライオン」は漫画を原作として、アニメ化実写映画化された大人気作品です。

幼い頃に家族を失った孤独な高校生プロ棋士の主人公桐山零が、隣町の川本姉妹や棋士仲間、恩師と出会うことで、人として成長していく物語です。将棋の世界に生きる、さまざまな人生を背負った棋士たちの壮絶な闘いも見どころとなっています。

 

クライマックスで登場する7一角打の妙手

この盤面は映画前編のクライマックスシーンの対局を再現したものです。
作中ではこの後手7九角打が妙手として紹介されますが、この一手によって戦局がどう動くのかを解説していきます。

1.先手同玉と取った場合

1手目.先手同玉
2手目.後手3二金

ここまでが作中で紹介されています。
状況として後手は、6八飛成、7八金で先手玉詰みとなりますので、先手は王手で攻め続けなければなりません
ただ先手は、後手の3二金に3一金と動かれると、金と銀の両方を失ってしまうので、3手目5手目で王手をかけながら後手の金を前に引き出します。

7手目.先手8八玉

先手は攻めの失敗による駒損を最小限にしたので玉を囲にに入れますが、この時点で先手持ち駒後手持ち駒を比較するとわかる通り、後手優勢の戦局に変わっています
特に、0手目と比較すると、7九角打の良さが際立ちます。

22手目.先手玉玉詰み

7手目以降の流れはあくまで一例ですが、後手優勢で先手の囲いも固くはないので、後手が勝つ確率の方が高いです。

2.先手9八玉と逃げた場合

1手目.先手9八玉
2手目.後手3一銀

こちらも同様に、ここまでが作中で紹介されています。
状況として後手は、金を持ち駒にしたので、8八金打で後手玉詰みです。
よって先ほどと同様に、先手は王手で攻め続けなければなりません

3手目.先手2四桂打
4手目.後手同角

4手目の後手の選択肢には、同歩と2二玉がありますが、
後手同歩であれば、先手2三銀打で詰みとなります。
後手2二玉であれば、先手2一角成、後手同玉、先手3二銀打、後手2二玉、先手3一銀、後手同玉、先手2一銀成で詰みとなります。

8手目.後手3二金

8手目で攻防がひと段落しますしますが、先ほどと同様に後手の持ち駒が増え、玉の囲いが固い分後手優勢といえる局面になっています
7九角打が戦局をひっくり返す手だということがわかります。

52手目.先手玉詰み

8手目以降の流れはあくまで一例ですが、後手の攻めの方が玉に近く、戦況も後手優勢ですので、後手が勝つ確率の方が高いです。

まとめ.7九角打は間違いなく逆転の一手!

後手7九角打は、先手がどう受けても後手優勢となる逆転の一手であることがわかりました。

本映画は将棋がわからない方でも楽しめるよう、将棋の用語や盤面のやりとりはほとんど登場しませんが、細かいところに注目し観ても、非常によく作り込まれている作品ということがわかりました。

まだ映画は観ていないけど、解説を通じて興味を持ったという方は、大変面白い作品ですので、ぜひご鑑賞ください!!

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